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■ トールボーイの具現化

実際のスタイリングのプロセスは、そのコンセプトに従って、数々のレンダリング・図面・モデルと順を追って形作られていく。

しだいに修正を行い、現実の形へとリファインしていくわけだが、シティの場合、コンセプトが定まってからは比較的スムースに進行した。エクステリア担当の在間さんに話を伺おう。

「シティはその性格上、道具として使いこなして欲しい。そのために、変わったクルマという印象は与えたくなかったですね。コンセプトが斬新な分、スタイリングはまともでありたいと・・・。つまり、かわいいものであるようにとか、不安定感を極力無くすように−−これはトレッドを広くとることで解決しました。空力的には、シティが高速でブッ飛ばすタイプのクルマではないということでCD(空気抵抗係数。シティは0.04)よりもCL(揚力係数。シティは0)を重視しています」

シティはディメンションが変わっている分、デザインはごくオーソドックスであった、という。それと、ベイシック・カーということで、ほとんど”遊び”はできなかった。たとえば、リア・ウィンドウは固定されている。外板と接着によって固定することで、ストレスを一部負担することができ、したがって、ボディ外板はひと回り薄くでき、軽量化に貢献しているという寸法だ。

03バンパー回りも同様だ。PP(ポリプロピレン)を材料に、ポリバケツの要領でつくった。廉価に、というのが出発点だったが、出来上がってみると、スタイリッシュで、衝撃にも強く、軽量で、といいことずくめ。ゼロから創造しよう、という精神の産物といえるかもしれない。今では他車にも多く用いられている。

「よくフィアット・パンダが引き合いに出されるんですが、あれはいいクルマです。ID(インダストリアル・デザイン)一本で押し通したっていんしょうですね。日本では、まだそこまでいかないようです。まだ受け容れられないってところでしょうかね。日本風にっていうことで、やはり人間くさくなるように心がけたりしました」

「丸型のヘッドランプは悩みましたね。いろいろな角型ランプをつくってみせるんですがOKがでない。フロント・スタイルなんかで好き嫌いがあるから、とは思うんだけど、どうもしっくりこない。ぎりぎりまで追いつめられて、ええいって丸型にしたら、すんなりそれに決まってしまいました」

スタイリングは、ほとんどやりきった印象だ、と在間さんは満足気な顔をしてみせた。たしかにそうかもしれない。<トールボーイ>という新しいユニークなコンセプト、それを具現化する作業は、デザイナーという創造を業とする人にとっては、なによりも甲斐のある仕事であったに違いない。


■ シティに盛り込まれたアイディア

シティは、ニューズに溢れている。溢れんばかりの愉しみが、その小さなボディに詰まっている。それらのひとつひとつは、プロジェクト・チームの手で”仕掛け”られたものだ。ハイルーフもブルドッグもカブリオレも、実は、シティの開発の時に、すでにその発展した姿として企画されていた。

「デビュウの半年前頃かな、シティをベースにいろいろな拡がりを求めてアプローチしたことがあります。そこで企画したものは多くが現実になったなあ。カブリオレなど、つくらせて貰えるとは思わなかったもの」と渡辺さんが言うように、シティは、エポックメイキングなニュースを残している。シティの発表会(そういえば記者発表会も実にシティ感覚に溢れた、ユニークなものだった)の折、そのリア・ゲートを開けたなかにあったバイク、モトコンポもそのひとつだ。

”ここにバイクが乗るんじゃない?”というひと言が現実になった。

いい企画が出ると、あとが速い。創造集団のいいところだ。軽くて、シティ感覚のバイク。乗せた時にリア・ウィンドウから、モトコンポの名前が覗けるように・・・。トランク・バイク、つまりトラバイで二輪×四輪=8倍おもしろい、ってフレーズはどお?お酒飲みに行ってシティを置いて帰って、翌日モトコンポでとりに行く。これ新しい交通システム・・・次々にハード/ソフト自在のアイディアが生まれる。

シティをいかに創っていくか、というテーマに沿って、次はターボ、次はカブリオレ・・・という風にアイディアを拡げていった。

04エクステリア担当 在間 浩主任研究員(当時)

「開発の途中から、シティをどう育てるかを考えていきました。デザイン的には、よりシャープな方へ行きましたね。どちらにせよ、シティはやりきったという印象です。心弾ませてつくったクルマだから、使う人にも心弾ませて乗って貰いたい。ホンダはそういうクルマづくりをするメーカーですから・・・」

「開発の途中からは、どうシティを育てるか考えていきました。デザイン的にはシャープなもの、つまりスタイル重視のタイプから、ソフトな4ドアなどへと発展するのが普通ですが、シティの場合は逆でしたね。よりシャープな、過激なブルドッグ II などへと発展したのですから。どちらにせよ、欲を言えばきりがないですが、シティは”やりきった”という印象ですね」

在間さんの言葉は、そのままシティの充実度を表しているようであった。

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